苦労して登る2800m登山

苦労して登る2800m登山

8月16日八ヶ岳横岳(2829m)から硫黄岳(2760m)へ・・・

前回はラクラク行ける3000メートル級登山をご紹介しましたが、今回は苦労して登る2800メートル級登山のご紹介です。まずは八ヶ岳横岳です

夏沢峠を境に南北に呼び分けられる八ヶ岳連峰。今回の横岳、硫黄岳は南八ヶ岳に属しています。北八ヶ岳にはスキー場などの関係で、ロープウェイやリフトがありますが、南にはそのような文明の利器はありません。つまり、麓から歩く苦労をしなければ八ヶ岳の天空にはたどり着かない。というわけです。

歩いた距離:約14キロ 掛かった時間:約10時間30分 標高差:約1100m

今回は横岳登山道の一つ佐久側の杣添(そまぞえ)尾根を登ります。野辺山高原から海ノ口別荘地に入り、標高1700メートルの登山口からスタートです。

ただひたすら登ること3時間30分。やっと横岳尾根にたどり着きました。苦労したかいが報われる一瞬。

苦労しないとこの景色を見ることができません。(高い山が赤岳2899m)

また、富士を背にこんな写真を撮ることもできます。

尾根伝いに横岳奥ノ院に向かいます。後方の山は蓼科山。梯子を上ると山頂に到着です。

山頂でしばし休憩し、硫黄岳に向かいます。(こんどは厳しい鎖場が待っています。)

鎖場を降りると、ここからは優しい尾根歩きになります。この辺一帯はコマクサの一大群生地。運が良ければ「白いコマクサ」を見ることができます。(我らも探しましたが見つかりませんでした。残念!)鞍部に見えるのは硫黄岳山荘です。硫黄岳は広々とした山頂なのでガスが出ると道迷いの危険があります。ケルンが登山道沿いにいくつもあり、これを頼りに歩きます。

広々とした穏やかな山頂とは対照的な、強烈イメージの硫黄岳山頂爆裂口です。

 

9月15日北アルプス、常念岳登山(2857m)

今回は北アルプスの中でも比較的容易といわれている常念岳を目指します。まず三股駐車場(標高約1300m)から前常念岳を目指し、そののち本峰常念岳に挑みます。帰りは常念乗越から一の沢駐車場に下る約15キロのコースです。

歩いた距離:約15キロ、掛かった時間:11時間、標高差:約1600m

三股駐車場に着いたのは午前4時。既に駐車場は一杯で車を止めるスペースはありません。仕方なく止められそうな路肩に駐車し、暗闇の中ヘッドランプの明かりを頼りにスタート。時計は4時30分を回っています。

9時30分。5時間かかってやっと前常念岳に到着。ここでやっと常念岳の全容を見ることができました。が、まだ槍、穂高を見ることはできません。

前常念岳からは緩やかな尾根道を登ります。歩くこと約50分。常念乗越からの登山道と合流。急坂を20分ほどかけて登るとやっと山頂に到着です。

槍、穂高を見るには絶好のポジションと言われる常念岳山頂。残念ながら3000メートル級山々の頂きは見事雲一直線に覆われてしまいました。それでも、山頂の楽しみは山座同定。地図を広げてしばし景色と見比べます。

常念乗越側に下山開始。不安定な足場。浮石に注意しながら下ります。麓の常念小屋は連休とあって大混雑です。

休憩を終え常念岳とお別れ。一の沢登山口へ下ります。朝とはうって変わって、次から次へと登山客が登ってきます。この時間に登るということは皆さん宿泊組ですね。最終水場は休む場所もないほどの混雑です。

石が邪魔をして歩きづらい登山道を一歩一歩気を使いながら、何度か沢を横切りやっと一の沢駐車場に到着したのは午後3時30分。先回りしていた自動車に乗り無事帰途に着くことができました。

(後日ニュースで知ったのですが、ちょうどこのころ一の沢胸突き八丁辺りで1名が遭難。滑落死されています。合掌。)

(今回はメンバー4人のうち、1名が体調不良で途中下山。一の沢に車を回して待機。・・・と言うことで。他の3名は前常念の岩場を下ることなく下山することができました。)

 

2ウェイグリップの使い方

Wストック全盛ですが、世の中には1本で使用する登山ステッキも存在します。と言うことで、今回は2ウェイグリップを使用したステッキの使い方を簡単に説明します。

写真:vip-carbon 2WG

これらのステッキは1本使いが基本です。そして、歩く時の補助として使う。と言うことが大前提。Wストックのように推進力に使ったり、歩行中、常時身体のバランスをとって歩く。と言うような使い方はしません。

このようなPOPもありますが、これは一例としての使い方です。必ずしもこの通りでなくてもかまいません。このグリップの場合、色々な握り方ができます。と言うことで、あまり握り方にこだわる必要はありません

写真A  写真B

ステッキを突く時、荷重は下に向かって掛かるので一般的には写真Aの握り方がラク。ただし、ずっとこの握り方をしていると、手のひらに負担が掛かり、痛くなることもありますから、時々は違う握り方をして、一か所に負担が掛からないようにします

写真Bの場合、軽く握り、力を入れて突かないことがコツです。このタイプのグリップには手の下側を支えるツバ部分がないので、どうしても手全体が地面側にずれようとします。これを防ごうと力を入れすぎるとかえって手が疲れます。

写真のように段差の大きい個所を一歩ひとまたぎで登らなければならないような時は、グリップ部分をしっかり握って身体を持ち上げる。

あいている片手をうまく利用する。

登りの時も下りの時も、あいている片手をうまく利用します。廻りの木や枝、あるいはしっかり安定した岩などを補助的に押さえながら登ります。この時注意すること→身体を預けても折れたり、抜けたりしない枝や木であることを確認してから身体を預けること、また、トゲなどもあったりするので手を痛めないように必ずグローブを着用すること、などを心がけてください。

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●ストラップの役目

ストラップ(ヒモ)は、手を使いたい時にステッキが身体から離れないように、腕などに掛けておく時に便利です。Wストックのストラップのような決まった使用法はありませんので、自分に合った使い方を工夫されるとよいと思います。あまりストラップにこだわると、グリップを握りなおす時などかえって煩わしくジャマになることもあります。

●スライダー付きのストラップ

締め付けると手が抜けないので要注意!

調節用のスライダーがついている場合。これを使用する時は、手首が抜けるだけの余裕をつけることが重要です。ストラップが手から外れないようにと手首に締めつけてはいけません。万が一、ステッキが岩場などに引っかかった時、身体も一緒に取られ、また、手首から外すこともできず非常に危険です。

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このステッキの良いところは、なんといっても片手があいているということです。ですから、カメラを片手に持って歩くなんてこともできるわけです。

注意! 不安定な場所でこのような『ながら歩き』は危険です。安全な場所であることを見極めてから行動しましょう。》

編集後記

今回もだいぶ長くなってしまいました。最後までお読みいただきありがとうございました。

いよいよ紅葉の秋山シーズン到来ですね。それと同時に、3000メートル級高山では、雪の便りがあってもおかしくない季節となりました。くれぐれも気を付けて秋山登山を楽しみましょう。